長岡 『東大の数学入試問題を楽しむ』を読んでみた

2020年9月8日

「読んでみた」シリーズについては以下の記事をご覧ください。

「読んでみた」シリーズ最初の記事です。

出会いの経緯

私が現在通っている高校の図書委員会には、図書購入班というものがあります。

この班に入るとなんと!

自分の好きな本を書店で選び学校図書館の蔵書に加えられるのです!!

もちろん本の購入にかかる代金は、学校の経費として落ちます。まさに一石二鳥

この本とは、図書購入班として、私が丸善を訪れたときに出会いました。

この本の著者である長岡亮介氏は、東進ハイスクールのカリスマ数学講師である長岡恭史の兄で、自身も駿台のカリスマ数学講師として活躍していた経歴をもちます。

私は東京大学が第一志望ではありませんが、「本質的で興味深く面白い」問題を毎年入試問題として出題する、東京大学の「一種のひねくれ根性」を味わいたいと思い、この本を選びました。

この本について

基本情報

タイトル:東大の数学入試問題を楽しむ 数学のクラシック鑑賞

定価:2200円(税抜)

発行年月:2013年2月

判型:A5判

ページ数:304ページ

内容紹介

東大の入試問題は、数学的奥行き・広がりをもった良問が多い。すなわち“古典”である。単に解法を知るのでなく、入試の古典から「之を知る者は之を楽しむ者に如かず」の精神を学び、真の“数学力”を身につけよう。

著者

長岡亮介

1947年 長野市生まれ

1977年 東京大学大学院理学研究科博士課程を満期退学、数理哲学、数学史を専攻。

その後、津田塾大学助教授、大東文化大学教授、放送大学教授を経て、明治大学理工学部数学科特任教授。2017年退職。

現在、若手数学教育者を支援する組織TECUMを主宰。(2020年4月現在)

こんな人にオススメ

本文中に登場する東京大学の数学入試問題は、あくまで「本文の補助」なので、数学が得意でない方や嫌いな方、内容を忘れてしまった方でも十二分に楽しめます。

もちろん、数学ⅠAⅡB履修済み(高校1~2年生程度)だとより楽しめます。

本書を読むうえ必要なものは、「自分で考え抜く力」ただ一つです。

よく学校の先生は

「10分考えてわからなかったらそれ以上考えても無駄だから答えを見よう」

と言いますが、私からしたら

それは全くの見当違いです。

考える時間・考え続ける時間は、一分一秒あなた自身のになります。

もちろん入試などの時間制限がある場では、より柔軟に問題を処理する能力が必要だとは思いますがね。

感想

まず伝えたいのは、

参考書・数学書の垣根を越えて、すべての「教育をする者」「教育を受ける者」にこの本を読んでほしい

ということです。

「数学とは、どんな世界なのであろう?」「数学を学ぶことには、どんな意味があるのだろう?」「数学が好きになるために、何をしたらよいのだろう?」――本書は、筆者が、これまでに何度も訊ねられ、一度もうまく答えることができていない、このような、「ふつうの人」からの質問に答えるための試みである。

長岡亮介著「東大の数学入試問題を楽しむ はじめに」より引用

これは、冒頭で述べられている筆者のねらいです。

本書は上記の問いかけに対して、明確に答えているわけではありません。

しかし一読したらわかるように、本書のあらゆるところで「筆者の考え方の一つ」「筆者の回答の一つ」がちりばめられています。

ある種の「寓喩」です。

そのような問いに対する「実体の持たない、輪郭のつかめない」答えを、東大の数学入試問題を絡めた物語を通して伝えようという気概が、この本からは感じ取れました。

「良い問題を1題作る」のは「良い曲を1曲作る」のと似ている

と、聖光学院時代の同級生である、元オフコースの小田和正氏が本の帯に寄せています。

内容紹介では、数学に焦点を当てていますが、数学の本というよりは哲学的・思想色が強めな本だと感じました。それ故「大学受験参考書」としては賛否あるものと思われます。

しかし、この本に書かれている「数学の考え方」は、職業数学に限らず、大学受験にも役立つことを私が保証します。読んで、考えて、“絶対に"損はしません

私自身数学をやっているときに、

「なぜ私は数学をやっているのか?」

「私より才能に恵まれている人が限りなく多く存在するのに、私が数学をやる意味はあるのか?」

などと考えることが(現在も)あります。

そんな私に、少しの勇気と自信を与えてくれたのが、この本です。

ここで私も著者になったつもりで、上記の質問に対する回答を与えてみたいと思います。

数学とは「自然科学と哲学の緩衝材」です。

緩衝材であるからこそ、科学者は現象の数学による説明に勤しみ、哲学者はゲーデルの不完全性定理(自然数論の理論が不完全であること)に代表される数学の基礎に魅了されます。

This book is written in the mathematical language.

これは、ガリレオ・ガリレイが残したとされる格言です。

私は「あらゆるものが数学で出来ている」というような過激な主張はしませんが、

この世界を極度に抽象化した先に数学がある

と考えています。

数学は「芸術」でもあります。

世界を抽象化したものだから、人間は数学に対して何らかの魅力を感じますし、数学はある種の芸術として成立するのです。

これが、私の考える「数学」です。(偉そうですねw)

–閑話休題–

これからは本文中で印象に残った話を、全41話の中から3話pick upして皆さんにご紹介します。

第7話 新ジャンルを開拓した伝説的名作

Q.

( x , y ) が原点を中心とする半径1の円の内部を動くとき、点 ( x + y , xy ) の動く範囲を図示せよ。

この問題は、メジャーな数学の問題集によく載っているいわゆる典型問題です。