【数学の考え方(全六回)】第一回 たし算・かけ算から学ぶ計算のしくみ ~アタリマエを疑う~

2020年5月14日

広大な世界へ…

このコーナーでは,少し難しく興味深く面白い内容を取り扱います.

かけ算の順序問題

皆さんは「かけ算の順序問題」をご存じでしょうか?

Q. リンゴが3個ずつ入った袋が全部で4袋あります.リンゴは全部でいくつありますか?

A1. 3×4=12(個)

A2. 4×3=12(個)

A1とA2はどちらも同じ答えを導き出していて,両方正解に見えます.

かけ算の順序問題は,ある小学校の教員がA2の解答にバツをつけたことから勃発しました.

具体的な内容は以下の動画やリンクを参照してください.

【数学小話】3×4≠4×3?

算数「かけ算の順序」を中心に数学教育を考える 掲示板

とある東大生はかけ算に順序が必要だと考えます|Nao Harada|note

かけ算の順序問題 – Wikipedia 

上記の通り,いろいろな意見があります.

一概にどちらが正しいとは言えませんが,私はこの問題については先ほどの問題と同様に「考える意味がない」と思っています.

それらは定義の問題で,人によって意見が変わってくるのは明々白々です.

皆さんはどう考えますか?

複素数の世界

私たちは数の世界の旅を通じて,実数の世界までを旅してきました.

このようなプロセスで,数の世界は様々に広がって行きます(自然数→整数→有理数→実数→・・・).

しかし,ある意味で「数の世界の終着点」は存在します.

それは「複素数」という数です.

複素数の定義

2乗すると -1 になる新しい数を1つ考えて,これを文字 i で表し,虚数単位という( i^2 = -1 ).

2つの実数 a,b を用いて a + bi の形に表される数を複素数という.

複素数というと,素数と関係がありそうな響きですが,全く関係ありません.

2つの実数,つまり,複数の要素から構成される数なので,日本語では「複素・数」と呼ばれています.

「複・素数」ではないので,気を付けてください.(英語ではcomplex numberと言います.)

Q. なぜこの数がある意味で「数の世界の終着点」なのでしょうか?

A. 複素係数一変数多項式が複素数の根(解)を持つ(代数的に閉じている)から.

上記の回答はわかりにくいので,なるべくかみ砕いて説明すると,

A.の説明
数学には「代数学の基本定理(Wikipedia)」という,とても有名な定理があります.
その定理の内容は「次数が1以上の任意の複素係数一変数多項式(係数が複素数で,変数が1つの多項式)には,複素根が存在する.」というものです.(ちなみにこの内容から「n次の複素係数一変数多項式はn個の解をもつ」ことが帰納的にわかります.)

「代数学の基本定理」は,複素数の集合が「代数的に閉じている」ことを主張しているのです.
つまり,複素数は「代数的に閉じている(代数的閉体)」です.

上記の説明もさっぱりですよねww

本当に,ごくごく単純に説明すると,

が良く目にする「方程式(多項式)」の解は,ゼッテー複素数ってマジ

だから俺らは複素数より”デッケー”数に学校で出会わなかったんか~

じゃあもう複素数が「数の世界の終点」ってことでヨくね??

というような感じです.(大真面目)

虚数単位 i については別の記事を出すのでお楽しみにしてください.

群・環・体について

先ほどは,演算がある集合について閉じていることが必要だと述べました.

この考え方は,現代数学の源泉である「群・環・体」の理論へとつながっています.

この理論を一言で説明すると,

「数学(主に代数学)のエッセンスを抽出したことで,幅広い応用が利く理論」

です.

以下に,演算の正確な定義と群環体それぞれの定義を述べます.

定義が難しく感じる方は,群環体の具体例だけでも確認してみてください.

(抽象的な物事を学ぶ際は,具体例を確認することが上達への最短ルートですよ!)

演算の正確な定義 

 X が集合であるとき,写像 \phi : X \times X \to X のことを集合 X 上の演算という.混乱の恐れがない時には, \phi(a,b) の代わりに ab と書く.

群の定義

 G を空集合ではない集合とする. G 上の演算が定義されていて次の性質を満たすとき, Gという.

  1. 単位元と呼ばれる元 e \in G があり,すべての a \in G に対し ae = ea = a となる.
  2. すべての a \in G に対し b \in G が存在し, ab = ba = e となる.この元 ba逆元とよばれ, a^{-1} と書く.
  3. (結合法則) すべての a,b,c \in G に対し, (ab)c = a(bc) が成り立つ.

群の具体例:

 G = 整数,有理数,自然数の集合は通常の加法により可換群(交換法則が成り立つ)

 G = (0を除いた)有理数,実数の集合は通常の乗法について可換群

環の定義

集合 A に二つの演算 +\times (加法・乗法,あるいは和・積)が定義されていて,次の性質を満たすとき, Aという.以下, a \times b の代わりに ab と書く.

  1.  A + に関して可換群になる.
  2. (積の結合法則)  すべての a,b,c \in A に対し, (ab)c = a(bc)
  3. (分配法則) すべての a,b,c \in A に対し, a(b+c) = ab + ac(a+b)c = ac + bc 
  4. 乗法についての単位元 1 がある.つまり, 1a = a1 = a がすべての a \in A に対して成り立つ.

環の具体例:

整数の集合は通常の加法と乗法により環

一元集合 :A = {0} を, 0 + 0 =00 \times 0 = 0 と定義すると, A は環である(零環自明な環

体の定義

集合 K に二つの演算 +\times (加法・乗法,あるいは和・積)が定義されていて,次の条件を満たすとき Kという.

  1. 演算 +,\times により K は環になる.
  2. 任意の K \in a \neq 0 が乗法に関して可逆元である逆元が存在する).

体の例:

 有理数,実数の集合は通常の加法と乗法により体であり,それぞれ有理数体実数体という

(上記の定義に「加法」や「乗法」が出てきましたが,これらは一般の(任意の)演算で,定義によって変わります.)

Q. 複素数はどのような演算について,群・環・体のどれを成すでしょう?

まとめ

今回のキーポイント

  • 四則演算の順序をcheck!
  • ある集合 S について演算が閉じているとき, S 上で演算が定義できる
  • 自分が「アタリマエ」だと思っていることを常に疑う → 科学的な精神
  • 「複素数」がある意味での「数の世界の終点」

最後までご覧いただきありがとうございました.

次回の記事もお楽しみに!

参考文献

wikipediaいろいろ

いらすとや

https://www.irasutoya.com/

数の起源

http://www7a.biglobe.ne.jp/~number/page1.html

ニコニコ大百科

https://dic.nicovideo.jp/a/6%C3%B72%281%2B2%29

高校数学の美しい物語

https://mathtrain.jp/

その他文中のリンク

数研出版『数学2』

雪江明彦著『代数学1 群論入門』